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2024/01/09 10:14

「モビール」というものが、そもそもどこから生まれたものなのか。
今回はモビールの発祥について書きたいと思います。

アートとしてのモビール

「モビール」とは、もともとアート作品の呼び名でした。日本語では「動く彫刻」と訳されます。今から100年ほど前、20世紀前半の芸術は、これまでの目を楽しませてくれるだけの視覚的な芸術から、徐々に逸脱していく流れの中にありました。ピカソをはじめ、反逆的で実験的な芸術が数多く生まれてきた時代だったのです。そのような流れの中で、「キネティックアート」という潮流が生まれてきました。元来静止していた作品に、時間という概念をプラスすることで、動きを作品に取り入れるアートのことです。今では珍しくないかもしれませんが、当時は画期的な作品でした。

そのキネティックアートの先駆者の一人、アメリカの芸術家アレクサンダー・カルダーが、のちにモビールと呼ばれることになる芸術作品を最初に作りました。「モビール」とは造語で、同じく芸術家のマルセル・デュシャンがカルダーの作品に対して名付けた言葉です。天井から吊るすタイプのものだけでなく、地面に固定されたものや大型のものもあります。風や空気の流れを捉えて動くところは今のモビールと同じですが、知育玩具やインテリアのモビールとは随分と異なります。

↑カルダーのモビールのひとつ「ファブニール・ドラゴンⅡ」。まるで大きな遊具のようです。

北欧やヨーロッパで生まれ変わったモビール

そのモビールが今のような形になってきたのは、主に北欧やヨーロッパで産業化されたからです。カルダーの一部の作品をベースとして、産業に見合う形で作り替えられたものが知育玩具やインテリアとして生まれ変わりました。北欧やヨーロッパのモビールでよく見られる棒の両端から可愛らしい動物などのパーツが吊り下がるようなモビールは、以下のカルダーの作品から影響を受けていることは明らかでしょう。実際、棒の両端にある黒いオブジェの代わりに、可愛らしい動物などのモチーフを吊り下げたものが現代でも多く見られます。


アレクサンダー・カルダー《Flocons de suie》1953年


このようにしてアメリカでアート作品として生まれたモビールは、北欧やヨーロッパで知育玩具やインテリアとして生まれ変わりました。日本人がモビールを作る場合、この北欧やヨーロッパのタイプを踏襲することが多いのですが、マニュモビールズはそれをもう一度別の角度から作り直すことができないかと考えました。モビールの歴史の中で、別の文脈のものを作れないかと考えたのです。(詳しくは「はじめに」をご覧ください。)

モビール=動く彫刻

このように、様々な種類のモビールがありますが、共通するのは自然の力を動力として不規則な動きをするというところでしょうか。モビール=「動く彫刻」なので、知育玩具やインテリアといえどもアートの要素が強いアイテムです。まだ歴史も浅いので、いろいろな見方や使い方ができる可能性に満ちたアイテムとも言えます。ぜひ生活の中にモビールを取り入れてみて、新たな発見や使い方を見つけてみてくださいね。


[参考文献]
『20世紀美術』高階秀爾(ちくま学芸文庫)
Wikipedia アレクサンダー・カルダー